財務諸表の勘定科目の中で昨今、影が薄いものの一つが「電話加入権」なのではないでしょうか。社歴がある程度、長い会社ですと、無形固定資産として計上されている例が多々、見られます。
NTTの固定電話回線を引くための負担金として、通信インフラがまだ十分ではなかった時代には約7万円と当時としては高額なものでした。
ところが、携帯電話の普及やIP電話など電話加入権が不要なインターネット回線が増え、電話加入権自体の金額も半額に値下げ。中古市場では数千円で取引されるなど、電話加入権の重要性は極めて低いものになっています。
それならば、評価損を計上すればいいのでは、ということになりますが、そう簡単にいかないところが電話加入権の難しいところ。
法人税法上の固定資産の評価損の計上事由として
- 災害により著しく損傷したこと
- 1年以上にわたり遊休状態にあること
- その本来の用途に使用することができないため他の用途に使用されたこと
- 資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと
- 1から4までに準ずる特別の事実
との5項目があります。
この中では②に辛うじて該当しそうですが、電話加入権の下落は1年以上の遊休状態にあったことが原因ではないことから、適用が難しいことが分かります。
それならば、今後の利用見込みがなければ解約してしまうのも一つの手です。電話加入権という権利の消滅ですので、除却損の計上は可能かと考えます。
NTT東日本によると、ナンバーポータビリティーなどで他のインターネット回線に引っ越したり、電話加入権自体の利用休止届を出したりして、その後、10年が経過すると自動的に解約になってしまうそうです。財務諸表全体のインパクトからするとそれほどではないかもしれませんが、除却すべきものが残っているのは不自然です。心当たりのある方は一度、NTTに確認するのもいいのかもしれません。