法人向けの保険商品はさまざまありますが、昨年頃から話題になっていたのが、主に外資系の保険会社が販売する「低解約返戻金型逓増定期保険」です。
個人に名義変更することにより、節税メリットを享受できるとして宣伝されてきました。
スキームは以下の通りです。
この保険は、解約返戻金がある一時期を過ぎると跳ね上がる特徴があります。
そこで、解約返戻金が跳ね上がる直前で法人から個人に名義変更し、解約返戻金が跳ね上がってから解約するというものです。
現行では、法人から個人に名義変更した場合の保険契約の権利の評価が解約返戻金の額と取り扱われることになっています(所基通36-37)。よって、解約返戻金が低い時点で個人に名義変更をすると、個人は低額な出費で保険を買い取ることができます。解約返戻金が跳ね上がった後に解約する際は特別控除の50万円が使える一時所得の扱いとなりますので、給与または退職金として法人から解約返戻金を支給されるよりも、所得税の税負担が軽減されることになります。
(例)
1.契約4年目
法人から個人に名義変更
評価額は解約返戻金の金額 800万円
個人から法人に800万円支払う
2.契約5年目
保険料1000万円を個人が支払った上で解約
解約返戻金4750万円を受け取る(一時所得)
一時所得の計算
① 解約返戻金4750万円-(法人への支払分800万円+5年目の保険料1000万円)=2950万円
② (2950万円-特別控除50万円)×1/2=課税対象金額1450万円
このスキームについては、名義変更された年までの払込保険料累計額などに比べ、大幅に低額な名義変更時の解約返戻金の額が、個人が受ける経済的利益の額の評価として合理性があるとはいえず、否認リスクが生じる可能性もあると言われています。今後の国税の動きに注意したいと思います。